28 分子科学研究所の概要
2-8 その他
2-8-1 知的財産
分子科学研究所では,特許出願,特許権の帰属等に関する実質的な審議を行うため,知的財産委員会を設けている。 委員会は,概ね各領域から教員1名,国際研究協力課長,財務課長に加えて,外部委員1名から構成されている。こ の分子科学研究所知的財産委員会での議決を機構知的財産委員会に諮り,機構として特許出願等を行うことになる。 法人化によって知的財産の研究機関による保有が円滑に行われるようになり,独創的な技術や物質開発に対する権利 が相応に保証されるシステムが確立してきたことと知的財産権の保有に対する評価が根付いてきたこともあって,研 究所に於ける特許申請件数は増加の傾向にあったが,このところ横ばい状態にある。内容は,電極用肺胞状炭素ナノ 構造体,神経細胞機能解析素子,マイクロチップレーザーを用いたレーザー点火装置など多岐にわたっている。この 中には,企業との共同出願も含まれている。これらを基にした企業との共同研究も盛んであり,基礎科学の成果が企 業を通して社会に還元される道を作っている。平成21年度の発明件数は,個人有としたもの0件,機構有としたも の7件(実出願7件),22年度は,個人有0件,機構有6件(実出願6件)であった(23年1月31日現在)。現在, 現状に即した知的財産管理方針を整備しつつある状況である。
2-8-2 実験棟改修
創設期に設計された実験棟は,20年を経た頃から研究所の新しい研究展開と共に様々な問題に直面し,配線配管 や循環水システムを初めとする各種インフラの大幅な改修の必要性が生じたため,平成10年度より施設整備費補助 金に 12 億 9 千万円の予算請求を行ってきたものの,バブルの崩壊に伴う予算の緊縮もあって長年現実のものとはな らなかった。実験棟の耐震化という観点からの予算要求に変更し,ようやく21年度の概算要求で「卓越した研究拠 点形成」に向けた改修ということで工事が認められた。
実験棟改修では耐震補強を行うのみでなく,これまでの実験棟が抱えていた水漏れ,排気,実験室内の異常高温に よる空調の非効率性等多くの問題を解決すべく工事が行われた。まず,5階部分及び西側廊下は夏の温度上昇が極め て大きく,冷房コストなどエネルギー的な観点からも大きな問題となっていた。また,窓のサッシは変形がひどく非 常時の開閉が出来ない状態であった。この為,今回は2重サッシと熱線や可視紫外域の一部を通しにくい特殊な窓ガ ラスを採用して,余分の太陽光加熱を防ぐようにしている。また,屋上に芝生マットを敷き,植物を通した水の吸収 蒸散による建物の温度制御もエネルギー消費の低減の為に導入されている。1階の南西部分は,磁気共鳴や低温実験 に対応した床・天井シールドを施し,高さスペースにも工夫がされている。地下はレーザー実験や電子顕微鏡の利用 に特化されている。また,化学合成実験は,5階及び4階の一部に限られているが,排気設備の関係で南側に集中さ れる。特に大きな変更点は,5階の北東側の5スパンを居室部分として改装したことであろう。これまで廊下であっ た東側部分を居室部分,つまり,眺望の良いデスクスペースとして改造し,オフィスとしても活用される。この為, 新しい廊下は建物中央に配置され,廊下との仕切りには磨りガラスを通して自然光が注ぐようになっている。廊下や 扉,壁の色も明色系を採用し,ひと味違う雰囲気を作っている。
21年度が北側,22年度は南側部分の工事が行われ,ドアの桜色,音声案内エレベーターや人感照明など,全体的 に「明るさとほんのりとした温かさ」が感じられる快適な空間が出来上がっている。今後の30年間の分野の変遷に も十分対応出来る改修が実施できた。